【獣医師監修】 それって年齢のせい?犬と猫のシニアサインを見逃さない | 著者:石川愛美 | 公式 ウィズペティ倶楽部 会報誌

ウィズぺティ 国産ペットサプリメント
国産ドッグフード
国産キャットフード
ウィズペティ【公式通販サイト】
初めての方へ会員登録ログイン買い物かご
犬用サプリ 猫用サプリ ドッグフード キャットフード【ウィズペティ 公式通販サイト】
TOP > 会報誌「ウィズペティ倶楽部」 > それって年齢のせい?犬と猫のシニアサインを見逃さない
獣医師
石川愛美
それって年齢のせい?犬と猫のシニアサインを見逃さない

「最近、年を取ったな」と感じたときが、健康を見直すタイミング

「以前より寝ている時間が長くなった」「散歩の途中で立ち止まることが増えた」「高いところに上らなくなった」。犬や猫と長く暮らしていると、ふとした瞬間に「年を取ったな」と感じることがあります。

もちろん、年齢を重ねれば若いころとまったく同じというわけにはいきません。活動量が少し落ちたり、筋肉量が減ったり、睡眠時間や生活のリズムが変化したりすることはあります。

一方で、私たち獣医師がシニアの犬や猫を診察するときに大切にしている考え方があります。それは、「老化そのものは病気ではない」ということです。

動物病院では、「もう年だから仕方がないと思っていました」という言葉を耳にすることが少なくありません。しかし、ゆっくり歩くようになった原因が関節の痛みだったり、寝てばかりいるように見えた背景に心臓病や腎臓病などが隠れていたりすることがあります。病気が少しずつ進行していると、毎日一緒にいるご家族ほど、その変化に気づきにくいこともあります。

米国動物病院協会(AAHA)のシニアケアガイドラインでも、高齢に伴う身体的・精神的な変化を「年齢だから当然」と考えてしまうことへの注意が促されています。

大切なのは、「シニアになったから心配する」のではなく、「シニアになったからこそ、小さな変化を丁寧に見ていく」ことです。

年齢を重ねること自体は病気ではありません。しかし、年齢を重ねるほど病気に出会う可能性は高くなります。日常生活の中に表れる小さなサインを見逃さないことが、犬や猫の快適なシニア期を支える第一歩になります。

犬と猫は、何歳から「シニア」になる?

「犬は7歳からシニア」と聞いたことがある方も多いかもしれません。しかし実際には、すべての犬を同じ年齢で区切ることはできません。

犬の場合、体の大きさや犬種によって平均的な寿命や加齢のスピードが異なります。一般的に大型犬は小型犬よりも早い時期から加齢に伴う変化がみられる傾向があります。そのためAAHAの犬のライフステージに関する考え方では、単純に「何歳以上」とするのではなく、その犬の予測される寿命の最後の約25%をシニア期と考えています。

たとえば同じ8歳でも、小型犬ではまだ比較的活発な成犬期の延長として過ごしていることがありますが、寿命の傾向が異なる大型犬では、より積極的にシニア期の健康管理を考える時期に入っていることがあります。

一方、猫では区分が比較的明確です。AAHAと猫獣医療協会(FelineVMA、旧アメリカ猫獣医師会)のガイドラインでは、7~10歳を「Mature Adult(成熟期)」、10歳を超えた猫を「Senior(シニア)」としています。

ただし、ここで覚えておきたいのは、「シニアになった日から急に老化が始まるわけではない」ということです。

年齢の区分は、あくまでも健康管理を見直すための目安です。7歳、10歳という数字だけを見るのではなく、その子の犬種・猫種、体格、これまでの病歴、体重や筋肉量の変化、生活スタイルなどを合わせて考える必要があります。

実際の診療では、「シニアになってから検査を始める」というより、元気な成犬・成猫のころから体重や血液検査、尿検査などのデータを残しておくことが非常に役立ちます。その子自身の若いころの数値と比較できるからです。

シニアという言葉は、「もう高齢だから」という線引きではありません。「これまで以上に体の変化を丁寧に確認していく時期に入った」というサインとして捉えていただくのがよいでしょう。

寝る時間が増えた、動きが遅くなった。それは自然な変化?

シニア期になると、ご家族が最初に気づく変化の一つが「動き」です。

以前ほど長時間遊ばない、散歩から早く帰りたがる、寝ている時間が増えた、といった変化は珍しくありません。しかし、そのすべてを単純な老化として考えることはできません。

特に注意したいのが、「できるけれど、やらなくなった」という変化です。

犬であれば、立ち上がるまでに時間がかかる、階段をためらう、散歩のスピードが遅くなる、車への乗り降りを嫌がる、フローリングで足を滑らせる、といった様子がないでしょうか。

猫ではさらに変化が分かりにくいことがあります。以前は一度で飛び乗っていた棚に上らなくなった、高い場所ではなく床付近で寝るようになった、階段を使わなくなった、毛づくろいが減ったなど、一見すると「落ち着いた」と感じる程度のこともあります。

こうした変化の背景に、変形性関節症などによる慢性的な痛みが隠れていることがあります。猫は特に痛みを表情や鳴き声で分かりやすく訴えるとは限りません。AAHAのシニアケアガイドラインでも、高齢の猫では関節に変形性関節症が存在していても、診察室で典型的な異常が分かりにくいケースがあることが指摘されています。

また、動かない理由が必ずしも関節だけとは限りません。心臓や呼吸器の病気、貧血、内分泌疾患、腎臓病、神経疾患などによって疲れやすくなっていることもあります。

「年だから動かなくなった」のではなく、「何か理由があって動きたくないのかもしれない」と一度考えてみる。この視点がとても重要です。

診察室では普段どおりに歩かない犬や猫も多いため、ご家庭での動画が診断の大きな助けになることがあります。立ち上がるところ、階段を上り下りするところ、いつもの散歩の様子などをスマートフォンで撮っておくと、獣医師に日常の状態を伝えやすくなります。

「年齢のせい」と思って見過ごしたくない病気のサイン

シニアの犬や猫では、病気の症状が非常にゆっくり現れることがあります。そのためご家族が変化に慣れてしまい、「昔からこんな感じだった」と感じるケースも少なくありません。

たとえば体重の減少です。

「高齢だから少し痩せるもの」と思われがちですが、病気による体重減少は珍しくありません。慢性腎臓病、糖尿病、消化器疾患、腫瘍など、さまざまな病気で体重が減少します。猫では甲状腺機能亢進症で、よく食べているにもかかわらず痩せていくこともあります。

反対に、太ってきたように見えても安心とは限りません。活動量の低下によって脂肪が増えている一方で筋肉が減少していることがあるからです。体重だけでは、この変化を十分に捉えることができません。

WSAVA(世界小動物獣医師会)では、栄養状態を評価するとき、脂肪のつき方を見るボディコンディションスコアだけでなく、筋肉量を評価する「マッスルコンディションスコア」の確認も重視しています。シニア期には、体重と一緒に筋肉の変化を見ることが重要です。

そのほか、夜中に歩き回るようになった、昼夜が逆転した、今までできていたトイレを失敗する、壁や家具の前で立ち止まる、呼びかけへの反応が変わったといった行動の変化にも注意します。

視力や聴力の低下だけでなく、痛み、内臓疾患、神経疾患、犬では認知機能不全などが関係することがあるためです。

また、口臭が強くなった、食べるのが遅くなった、硬いものを避けるようになったという変化も、「年だから歯が悪くなった」で済ませるべきではありません。歯周病、折れた歯、口腔内の炎症や腫瘤など、治療が必要な状態が隠れている可能性があります。

老化と病気の症状は、見た目だけでは区別できないことがあります。だからこそ、「以前と違う」という事実そのものを大切にしてください。

毎日見てほしい4つのポイント――食欲・飲水・排泄・歩き方

シニア期の健康状態を把握するうえで、特別な機器は必ずしも必要ありません。毎日の生活を観察することが、非常に有用な健康チェックになります。

まずは「食欲」です。

単純に食べた、食べなかっただけではなく、食べるスピードや食べ方も見てください。食事を途中でやめる、フードを口から落とす、片側だけで噛む、硬いものだけ残すといった変化は、口腔内の痛みが関係している場合があります。一方、食欲が増しているのに体重が減っていれば、糖尿病や猫の甲状腺機能亢進症などを疑うきっかけになることがあります。

次は「飲水量」です。

水を飲む量は、フードがドライかウェットか、気温、運動量などによっても変わります。そのため一日だけの量に一喜一憂するより、「最近、給水器の水が減るのが早い」「以前より何度も水を飲みに行く」という変化を見ることが大切です。

飲水量や尿量の増加は、慢性腎臓病や糖尿病、犬の副腎皮質機能亢進症など、さまざまな疾患でみられます。猫では甲状腺機能亢進症などでも認められることがあります。

そして「排泄」。

尿の回数や一回量、便の硬さだけでなく、トイレまで間に合っているか、排尿姿勢を長く取っていないか、猫ならトイレの外で排泄するようになっていないかにも注目しましょう。

シニア猫がトイレの外で排泄したとき、「認知症かな」「わざとしているのかな」と考える前に、膀胱や腎臓の病気、便秘、関節痛などを確認する必要があります。トイレの縁をまたぐこと自体がつらくなっている猫もいます。

最後が「歩き方」です。

立ち上がり、歩き始め、階段、ジャンプ、散歩の距離などを以前と比べます。「足を引きずっていないから大丈夫」とは限りません。左右両方の関節に痛みがある場合などには、明らかな跛行として現れず、単にゆっくり歩く、遊ばなくなるという形で現れることがあります。

毎日見ているからこそ分かる変化があります。可能であれば、気になった日付と内容を簡単にメモしておくことをおすすめします。

見た目が元気でも、体の中では変化が始まっていることがある

「食欲もあるし、散歩にも行くので健康診断はまだ必要ないですよね」と聞かれることがあります。

元気であることはもちろん良いことです。しかし、元気に見えることと、病気がないことは必ずしも同じではありません。

腎臓病をはじめとした慢性疾患、高血圧、内分泌疾患などの中には、初期にははっきりとした症状が現れないものがあります。そのため、症状が出てから調べるだけではなく、「元気なときのデータ」を定期的に確認しておくことが重要です。

AAHAの2023年シニアケアガイドラインでは、シニアの犬・猫に対し、身体検査とともに血球計算(赤血球や白血球、血小板などの数)、血液生化学検査(腎臓や肝臓の値)、尿検査などを6~12か月ごとに行うことが推奨されています。また、甲状腺ホルモンや血圧についても定期的な評価が推奨され、特に高齢の猫では重要性が高いとされています。

猫についても、AAHA/FelineVMAのライフステージガイドラインでは、シニア猫は少なくとも年1回の検査を行い、6か月ごとのチェックが推奨されています。

もちろん、すべての犬や猫に毎回まったく同じ検査が必要という意味ではありません。年齢、犬種・猫種、これまでの病歴、診察所見などによって、必要な検査は変わります。

健康診断の大きなメリットは、一回の検査結果だけを見ることではなく、「変化を追えること」です。

たとえば腎臓に関する数値が基準範囲内だったとしても、数年前から少しずつ変化しているのであれば、その推移が診断のヒントになることがあります。体重についても同じです。5.0kgから4.8kgへの変化だけを見るとわずかに感じますが、4.6kg、4.3kgと減っているのであれば意味が違ってきます。

その子自身の過去と比較すること。それがシニア期の健康管理では非常に重要になります。

元気なうちから始めたい、シニア期の健康管理

シニアケアというと、病気になってから始めるものと思われるかもしれません。しかし、実際には「まだ元気」という時期こそ始めどきです。

まず大切なのが、適正な体重と筋肉を維持することです。

肥満は関節への負担を増やします。一方で、シニア期には筋肉が少しずつ減っていくことがあり、必要以上の食事制限にも注意が必要です。「シニアになったらとにかく低カロリー」と一律に考えるのではなく、その子の体格、筋肉量、活動量、基礎疾患に合わせて食事を考えます。

運動も同様です。

若いころと同じ距離を無理に歩かせる必要はありませんが、痛みがなく運動できるのであれば、適度な活動を続けることは筋肉を維持するうえで重要です。短めの散歩を複数回に分ける、滑りにくい場所で歩くなど、その子に合わせて調整していきます。

家の環境も見直してみましょう。

フローリングには滑りにくいマットを敷く、段差にはステップやスロープを設置する、寝床を体が休まりやすいものにする。猫なら、これまで高い場所に置いていた食器や寝床にアクセスしやすくしたり、入口の低いトイレを用意したりする方法があります。

こうした工夫は、動けなくなってから行うより、まだある程度動ける段階から少しずつ取り入れるほうが犬や猫も慣れやすくなります。

そして、定期的な健康診断に加え、「家でしか分からない情報」を記録しておくこともおすすめします。

体重、食欲、飲水、排泄、散歩時間、ジャンプの様子など、すべてを細かく記録する必要はありません。気になる変化があったときだけでも構いません。

診察室で獣医師が見ることのできる時間は限られています。毎日の暮らしを知っているご家族の観察は、シニア診療において非常に重要な情報なのです。

「年だから仕方がない」ではなく、「年だからこそ」気づけること

犬や猫と何年も一緒に暮らしていれば、年齢とともに変化が生じることは避けられません。

白い毛が増えたり、若いころよりゆっくり歩くようになったり、遊ぶ時間より日なたで眠っている時間を好むようになったり。そうした変化のすべてを心配する必要はありません。

ただし、「シニアだから」という言葉で、その変化を見ることをやめないでほしいと思います。

寝ている時間が増えた。
散歩が短くなった。
階段を上らなくなった。
水をよく飲むようになった。
少し痩せてきた。
トイレを失敗するようになった。
夜になると落ち着かない。

一つひとつは小さな変化でも、その背景に治療できる病気や、痛みを軽減できる状態が隠れているかもしれません。

また、病気が見つかることは、必ずしも悪いことばかりではありません。早い段階で気づくことができれば、治療や食事管理、生活環境の改善によって、より快適に過ごせる時間を長くできる可能性があります。

シニア期の健康管理で大切なのは、若返らせることではありません。

その子がその子らしく、食べて、歩いて、眠って、ご家族と穏やかな時間を過ごせるように支えていくことです。

そのためにまずできることは、毎日の暮らしの中で「以前との違い」に気づくこと。そして、気になる変化を「年齢のせいかな」で終わらせず、かかりつけの獣医師に相談することです。

「もう年だから」ではなく、「年を重ねてきたからこそ、今の状態を大切に見ていく」。

そんな視点が、犬や猫の健やかなシニアライフを支える大きな力になると考えています。

ページ先頭へ SSL グローバルサインのサイトシール